| 熊谷隆志と神山隆二の90年代の出会い

熊谷:神山とはもうバリバリ長い付き合いになるよね。30年近い?

神山:30年だね。時が経ったねえ。たしか隆志に最初に会ったのはファッションの店だったと思うけど。隆志がフランス留学から帰ってきてすぐくらいのころに。

熊谷:神山の兄さんがスタイリストの神山宏明さんで、そういう流れで仲よくなったのもあったかな。裏原宿が全盛の時代だったね。

神山:僕は当時、ひとみさん(MILK BOY)のお店でジョニオくん(ファッションデザイナー高橋盾)に会ってからよく自宅へ行って遊びながら手伝いをしていたんだ。それをきっかけにTシャツの手刷りを覚えて、自分でもパターン製作してプリントしながら手売りし始めたのがFAMOUZ のスタートでだった。そのうち界隈が裏原宿と呼ばれるようになったんだけど、Tシャツのグラフィックをデザイナーが自ら手描きすることが多かったね。

熊谷:スタイリストやってた僕がはじめたGDC(ジーディーシー)は裏原宿とはスタンスが違ってたかな。ド裏原じゃなかった。ただGDC、FAMOUZは同時代を生きた共通する意識があるブランドだったよ。GDCもFAMOUZも2000年代に休止したけど。互いに別のことをやりたくなっての休止。

| 裏原宿FAMOUZが熊谷隆志の声がけでついに復活!

熊谷:今回GDCを20年ぶりに復活させたとき、売却していたブランドを買い戻したんだ。資金を投入して、あとに引けない状況にまで自分を追い込んだ。ゼロから新ブランドをやるより自分のライフワークであるGDCをまたやるのがいいと考えて。今回のテーマのひとつが、オーセンティックブランドとのコラボ。そしてもうひとつが、昔ながらの付き合いのある人たちとタッグを組むこと。神山をいきなり早朝に呼び出したよね(笑)。「一緒になにかやろうよ」と気持ちを伝えた。

神山:隆志は最近朝型だからね(笑)。本当にタイミングがいい声がけだったよ。昨年から今年に掛けて展覧会をセーブしてた時期だったから。ファッションから離れてアート活動を続けてきたなかで一休みしていたときにもらった声がけだった。

熊谷:今回のコラボは熊谷隆志×神山隆二というより、GDC×FAMOUZ。FAMOUZ待望の復活でもある。

神山:そうだね。コラボ第1弾の今回はTシャツで、バックプリントに互いのロゴを重ねて入れてる。

熊谷:昔のFAMOUZでこのロゴを使ってたよね?

神山:そう。でも商品に使うのはそれこそ数十年ぶりかな。

熊谷:アーティストである神山に声がけしたとき、精神的に負担になるかと思いちょっと気にしてたんだ。でも快諾してくれてホッとしたよ。いまの若い子たちってY2Kや裏原のファッションが好きでしょ。古着店で初期のシュプリームやステューシーと、リーバイスと並んでGDCが売られている時代。今回のコラボをきっかけに神山に火がついて、FAMOUZを完全復活してくれたらファンは大喜びするけど?

神山:そうだね、SNSとか見るといまでもファンがいることを知って嬉しくなる。ただ完全復活はなんとも言えないかな。これまでも「復活させませんか?」と何度もオファーをいただいてきたけどやらなかった。ブランドの復活は体力いるし、片手間ではできないことだからね。

熊谷:そうなんだ。あ、ここでおれたちの対談読んでくれてる人たちに、リーク情報教えちゃおうかな。GDC×FAMOUZ第2弾が今年中に出ます。Tシャツの次はスタジャンです。枚数がすごく少ない超限定品になるから続報をお待ちください!

| 旧友とのコラボは同窓会のよう

熊谷:この対談を読んでくれてる人は、どの時点で神山がアーティストになったか知りたいんじゃない?FAMOUZは突然なくなったわけだし。アーティストになった事情を話してよ。

神山:僕は19〜20歳のときグラフィックデザイン事務所に勤めたことがあった。グラフィック業界が盛り上がっていた時代だね。そこで紙に絵を印刷する経験をしていた。のちにTシャツにプリントワークを施したとき、紙からTシャツに対象が変わって新鮮に感じた。だからTシャツは思い入れが深いアイテム。自己表現のひとつという認識で。FAMOUZのコレクションも絵を描くのと同じスタンスだった。そこでしだいにブランド運営から離れ、ひとりで活動することにしたんだ。まず知人の紹介で東京・中目黒のスペースで2003年に展覧会をやった。そこに来た人にアメリカでの展示を誘われアメリカでも発表。それからずっとマイペースで絵を描き続けてる。ファッションシーンとは縁遠くなってしまったけど、隆志のおかげで20年以上ぶりにFAMOUZの名を入れたTシャツを作れたね。楽しかったし、嬉しかったよ。

熊谷:同窓会っぽかったね。

神山:そうそう。Tシャツが僕らの原点であり、新しいチャレンジでもある。

熊谷:この対談読んでくれてる昔の知り合いで、いまムズムズしている人がいればご連絡ください(笑)。なにか一緒にやりましょう!!

About GDC

1998年、スタイリスト・フォトグラファー・ブランドディレクターとして多彩な分野で活動する熊谷隆志によって設立された「GDC」。約四半世紀の休止を経て、2025年3月に再始動。上質な素材と快適さを追求し、シンプルで実用的なデザインを特徴とする。ヴィンテージ感と現代性を融合させたスタイル、独自のロゴやグラフィック、多様なコラボレーションを通じて、常に新たな魅力を発信。アイディアとプロダクトの継続的な発展に注力し、新しい価値を創造し続ける。

About FAMOUZ

1992年、神山隆二によって設立された日本のストリートブランド「FAMOUZ(フェイマス)」。神山隆二はもともとグラフィックデザイナーだったが、Tシャツの手刷りや古着のリメイク、ハンドメイドの作品を作るようになる。個人のアートワークも活発で、フェイマスを2002年に終了した後も個展や合同展覧会を開催する。現在はアーティストとして国内外での展示を中心に企業とのコラボなど多岐にわたって活動中。この度、GDCとのコラボレーションに伴いスポットでのブランド復活を遂げた。

Photographer:Ryuto Yoshida
Writer:Kazushi Takahashi